トラウマフォーカスト認知行動療法

 Trauma-Focused Cognitive Behavioral Therapy, TF-CBT

 

TF-CBTとは?

TF-CBTは、ジュディス・コーエン、アンソニー・マナリーノ、エスター・デブリンジャーらによって、米国で開発された子どもを対象とした治療プログラムです。1990年代に性的虐待を受けた子どもの治療に試行されたのを皮切りに、養育者の治療参加、子どもの発達的要素への着目など、修正と改良が加えられながら発展してきました。現在では、さまざまなタイプのトラウマへの応用がなされており、欧米のいくつかのガイドラインにおいて、子どものPTSD治療の第一選択として推奨されています(AACAP,2009)。

TF-CBTは、子どものPTSD症状だけでなく、トラウマに関連したうつや不安症状、行動上の問題、恥や罪悪感といった感情、社会生活能力などにおける回復が認められています。また、養育者を治療に組み入れることで、養育者自身の抑うつ感情やPTSD症状、養育能力や子どものサポート機能の向上にも効果を発揮します。

 

TF-CBTの治療目標

子どもと養育者が、トラウマ体験の記憶を適切に処理し、トラウマに関連する非機能的な認知や思考、コントロール不全に陥っている感情、不適応的な行動を、うまく管理できるようになることがこのプログラムの目標です。

TF-CBTの構成要素

TF-CBTは、認知行動療法の原理原則に基づき、アタッチメント理論、発達的神経生物学、家族療法、エンパワメント療法、人間性心理学などの要素を取り入れ統合された、ハイブリッドな治療プログラムです。その構成要素は、A-PRACTICEの頭文字で表されます。

 

TF-CBTの治療構成要素「A-PRACTICE(Cohen et al., 2017)

Assessment and case conceptualization

 アセスメントとケースの概念化

Psychoeducation about child trauma and trauma reminders 

 子どものトラウマとトラウマリマインダーについての心理教育

Parenting component including parenting skills 

 ペアレンティングスキルを含む養育に関する要素

Relaxation  skills individualized to child and parent 

 子どもと養育者それぞれへのリラクセーションスキル

Affective expression and modulation skills tailored to youth and family  

 子どもと家族に合わせた感情表出と調整のスキル

Cognitive coping: cognitive triangle           

 認知コーピング: 認知の三角形

Trauma narration and processing  

 トラウマナレーションとプロセシング

In vivo mastery of trauma reminders   

 実生活内でのトラウマリマインダーの統制

Conjoint child-parent sessions 

 親子合同セッション

Enhancing future safety and development  

 将来の安全と発達の強化